ドラクエ6のバーバラの正体を考察してみた:彼女は何者なのか?

『ドラゴンクエストVI 幻の大地』(以下、DQ6)は、夢と現実が交錯する独特の世界観と魅力的なキャラクターで多くのファンを魅了してきました。

その中でも、ヒロインの一人であるバーバラは、謎多き存在として特に注目を集めます。

記憶喪失の少女、魔法都市カルベローナの末裔、そしてエンディングでの切ない別れ――彼女の正体については、公式な設定とプレイヤーの考察が交錯し、数々の説が生まれています。
この記事では、バーバラの正体について、ゲーム内の情報、公式発言、関連作品、そしてファンの考察を基に詳細に掘り下げ、彼女が何者なのかを考えてみます。

 

 

 

1. バーバラの基本情報と物語での役割

バーバラは、DQ6の仲間キャラクターの一人で、主人公一行が月鏡の塔で出会う少女です。以下は彼女の基本的なプロフィールです:

 

     

  • 名前:バーバラ(英語版:Ashlynn)
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  • 特徴:パイナップルヘアーと呼ばれる独特の赤髪、17歳(諸説あり)、天真爛漫でおてんばな性格。
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  • 設定:記憶喪失の少女で、通常の人間には見えない「精神体」として登場。夢見のしずくを使うことで実体化し、主人公一行に同行する。
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  • 出身:魔法都市カルベローナの末裔で、伝説の大魔女バーバレラの血を引く。
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  • 能力:MPが非常に高く、炎系呪文(メラ、ギラ、ベギラマ)や究極魔法マダンテを習得。物理ステータスは低く、典型的な魔法使いタイプ。
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物語では、バーバラは夢の世界の住人であり、現実世界に実体を持たないことが明らかになります。彼女の故郷カルベローナは大魔王デスタムーアによって滅ぼされ、住民は魂だけの存在として夢の世界に逃れました。バーバラはこの状況下で生まれ、精神体として月鏡の塔を彷徨っていたのです。エンディングでは、デスタムーアの敗北により夢と現実の繋がりが断たれ、彼女は主人公の前から消えてしまいますが、ゼニス城で「未来」を象徴する卵を見守る姿が描かれます。
バーバラの物語は、彼女の正体を考える上で重要な手がかりを提供します。特に、以下のポイントが考察の鍵となります:

 

     

  • 記憶喪失と精神体の設定
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  • カルベローナとバーバレラとの関係
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  • 黄金竜との関連性
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  • エンディングの卵とマスタードラゴン説
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2. バーバラの正体に関する主要な説

バーバラの正体については、ゲーム内の曖昧な描写や堀井雄二氏のインタビュー、関連作品の設定から多くの考察が生まれています。以下に、代表的な説を詳細に整理します。

 

 

2.1. バーバラ=黄金竜説

概要:DQ6の序盤、ムドーの城に向かう際、ミレーユが土笛(オカリナ)を吹くと現れる黄金竜がバーバラの真の姿、あるいは彼女の精神が変身した姿だとする説。
根拠

 

     

  • ムドー戦での行動:ムドーの島に向かう際、バーバラは「船に残る」と言い、他の仲間と行動を共にしません。このタイミングでミレーユが笛を吹き、黄金竜が現れて一行を城まで運びます。この不可解な行動と竜の登場がリンクしていると解釈されることがあります。
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  • カルベローナの設定:カルベローナの住民は「肉体から精神を解放し、別の姿に変身する能力」を持つとされています。村人のセリフ「偉大なる大魔女バーバレラの血を引くバーバラさまなら、きっとドラゴンにでも…」は、彼女が竜に変身可能であることを示唆します。
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  • 堀井雄二の発言:堀井氏はインタビューで、「バーバラ=黄金竜という設定で物語が作られていた時期があった」と語っています。ただし、容量の都合でこの設定は削られた可能性があるとも述べ、公式には確定していません。
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  • 小説・漫画版の描写:小説版『ドラゴンクエストVI』(久美沙織著)や漫画版『ドラゴンクエスト 幻の大地』(神崎まさおみ著)では、バーバラが黄金竜に変身するシーンが明確に描かれています。これが「バーバラ=黄金竜説」の強い裏付けとなっています。
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反論

 

     

  • リメイク版の変更:DS版以降、ムドー討伐後に黄金竜が登場しなくなる仕様変更があり、バーバラが竜であることを否定する意図が推測されます。また、ムドー戦後にバーバラを連れて笛を吹いても竜が現れるため、彼女自身が竜であると矛盾が生じます。
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  • モンスターバトルロードの演出:関連ゲーム『ドラゴンクエスト モンスターバトルロード』では、ミレーユがオカリナで呼び出す竜が「マスタードラゴン」と明記され、主人公一行全員がその竜に乗って登場します。バーバラも乗っているため、彼女が竜だと矛盾します。
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  • ゲーム内の描写不足:ゲーム本編では、バーバラが竜に変身する直接的な描写や説明がなく、プレイヤーの想像に委ねられています。
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考察:黄金竜説は、物語のロマンとバーバラの神秘性を高める魅力的な仮説です。特に、彼女が船に残る理由(竜への変身を恐れていた、仲間に見られたくなかった等)を考えると、キャラの心情に深みが増します。しかし、リメイク版の変更や他の作品の描写を考慮すると、黄金竜はバーバラとは別個の存在(例えばマスタードラゴン)である可能性が高いです。それでも、カルベローナの変身能力や堀井氏のコメントから、彼女が竜に関連する特別な力を持つことはほぼ確実でしょう。

 

 

2.2. バーバラ=マスタードラゴン説

概要:エンディングでバーバラが見守る「未来の卵」が天空シリーズの神たるマスタードラゴンの卵であり、彼女自身がマスタードラゴン、あるいはその産み主であるとする説。
根拠

 

     

  • エンディングの卵:DQ6のエンディングでは、ゼニス城でバーバラが「わたしたちの未来」と呼ぶ卵が孵化する場面で幕が閉じます。この卵がマスタードラゴン(DQ4、DQ5に登場する天空の神)の起源だと考えるファンが多いです。
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  • 天空シリーズの時系列:DQ6は天空シリーズ(DQ4、DQ5、DQ6)の時系列で最も古い物語とされ、DQ4・DQ5の天空城やマスタードラゴンがDQ6のゼニス城から派生した可能性があります。バーバラが卵の孵化に関与することで、彼女がマスタードラゴンの誕生に深く関わっていると推測されます。
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  • カルベローナの役割:バーバラはマダンテの継承者であり、カルベローナの神聖な役割を担う存在です。この点から、彼女が天空シリーズの神話に繋がる役割を持つと考えられます。
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反論

 

     

  • 明確な証拠の欠如:ゲーム本編では、卵の正体がマスタードラゴンと明言されておらず、プレイヤーの想像に委ねられています。バーバラがマスタードラゴンそのものであるとするには、直接的な描写が不足しています。
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  • モンスターバトルロードの矛盾:前述の通り、黄金竜がマスタードラゴンとされ、バーバラがその乗客として登場するため、彼女がマスタードラゴンそのものである可能性は低いです。
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  • 時系列の不整合:マスタードラゴンはDQ5で人間の姿(プサン)として登場するが、バーバラがそのような変身を行う描写はDQ6にありません。また、卵の孵化がマスタードラゴンの誕生を意味する場合、彼女が産み主や守護者である可能性の方が高いです。
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考察:マスタードラゴン説は、天空シリーズ全体の繋がりを考える上で非常に魅力的な仮説です。バーバラがマスタードラゴンの卵を孵化させる役割を持つとすれば、彼女は単なるヒロインを超え、天空シリーズの神話の起源に関わる存在となります。ただし、彼女自身がマスタードラゴンであるというより、カルベローナの末裔として神聖な使命を果たす存在と考える方が自然です。エンディングでの「未来」という言葉は、DQ4・DQ5への希望を象徴している可能性が高いです。

 

 

2.3. バーバラ=女神像の転生体説

概要:カルベローナの女神像から100年に一度長老が生まれる設定から、バーバラが大魔女バーバレラの魂の転生体、あるいはコピー的存在であるとする説。
根拠

 

     

  • カルベローナの設定:カルベローナ中央の女神像にはバーバレラの魂が宿り、そこから長老が生まれるとされています。現長老ブボールもこの像から生まれ、250歳以上であると推定されます。バーバラが次期長老として期待されていることから、彼女も女神像から生まれた可能性があります。
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  • 精神体の特異性:バーバラは現実世界に肉体を持たず、精神体として存在します。これは、女神像から生まれた魂だけの存在であることを示唆します。
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  • マダンテの継承:バーバラがバーバレラの編み出したマダンテを習得することは、彼女がバーバレラの直系の子孫、あるいは魂の継承者であることを裏付けます。
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反論

 

     

  • 明言の欠如:ゲーム内でバーバラが女神像から生まれたと直接的に述べられる場面はありません。あくまで推測に基づく説です。
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  • 年齢の不整合:バーバラは17歳前後とされ、カルベローナ滅亡(約50年前)以降に生まれたと推測されますが、女神像から100年に一度しか生まれない設定と整合性が取りづらいです。
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考察:女神像の転生体説は、バーバラの神秘性とカルベローナの特殊な設定を説明する上で説得力があります。彼女がバーバレラの魂の一部、あるいはコピー的存在だとすれば、記憶喪失や精神体の状態も、魂が不安定な状態で夢の世界に現れた結果と解釈できます。この説は、黄金竜説やマスタードラゴン説とも部分的に重なり、彼女が「神聖な存在」であることを強調します。

 

 

3. バーバラの正体を考える上での鍵

バーバラの正体を考察する際、以下の要素が重要な手がかりとなります。

 

 

3.1. 夢と現実の境界

DQ6のテーマである「夢と現実」の対比は、バーバラの存在に強く反映されています。彼女は夢の世界の住人であり、現実世界では実体を持たない。この設定は、彼女が単なる人間ではなく、夢の世界の法則に縛られた特別な存在であることを示します。エンディングで彼女が消えるシーンは、夢と現実の分離を象徴し、プレイヤーに深い感動を与えます。

 

 

3.2. 堀井雄二の意図と削られた設定

堀井氏は、DQ6のストーリーにおいて多くの設定を意図的に曖昧にし、プレイヤーの想像に委ねる手法を取っています。バーバラ=黄金竜の設定が容量の都合で削られたという発言は、彼女の正体が当初もっと明確に描かれる予定だったことを示唆します。この「削られた設定」が、考察の余地を広げ、ファンの間で議論を盛り上げています。

 

 

3.3. 漫画・小説版との比較

漫画版『ドラゴンクエスト 幻の大地』(神崎まさおみ著)では、バーバラが黄金竜に変身し、さらには主人公と結ばれるハッピーエンドが描かれます。これは、原作の切ない結末に納得できなかった作者が堀井氏に直談判して実現したエンディングです。小説版でも同様にバーバラが竜に変身する描写があり、公式設定の一端を補完していると考えられます。

 

 

3.4. プレイヤーの感情と解釈

バーバラの正体を考える上で、プレイヤーの感情も大きな役割を果たします。彼女の消滅は「切ない」「不憫だ」と感じるプレイヤーが多く、彼女を「救いたい」という思いがハッピーエンドを求める考察や二次創作に繋がっています。この感情的な繋がりが、バーバラの正体を単なる設定以上のものにしています。

 

 

4. 総合的な考察:バーバラは何者か?

以上の情報を総合すると、バーバラの正体は以下のように考えられます:

 

     

  • カルベローナの末裔かつ神聖な存在:バーバラは大魔女バーバレラの血を引き、カルベローナの次期長老として期待される存在です。彼女は女神像から生まれた魂の転生体、あるいはコピー的存在である可能性が高く、精神体として夢の世界に現れたと推測されます。
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  • 黄金竜との関連:バーバラが黄金竜そのものである可能性はリメイク版や関連作品で否定されていますが、カルベローナの変身能力により、竜に変身する潜在能力を持っていたと考えられます。堀井氏の「削られた設定」発言や小説・漫画版の描写は、彼女が竜と深い関わりを持つことを示唆します。
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  • マスタードラゴンの守護者:エンディングの卵がマスタードラゴンの起源であるとする説は、天空シリーズの時系列を踏まえると説得力があります。バーバラはマスタードラゴンそのものではなく、その誕生を見守る神聖な役割を担った存在と考えられます。
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  • ヒロインとしての象徴性:バーバラはDQ6のテーマである「夢と現実」を体現するキャラクターであり、プレイヤーに「夢の儚さ」と「未来への希望」を伝えます。彼女の消滅は悲劇的ですが、ゼニス城でのシーンは希望の象徴として機能します。
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最終的に、バーバラの正体は「明確な答えがないこと」が彼女の魅力の一部です。堀井氏の意図通り、プレイヤー一人ひとりが彼女の物語を解釈し、想像することで、彼女の存在はより深みを増します。

 

 

5. バーバラの正体を考える楽しみ

バーバラの正体を考察することは、DQ6のストーリーを深く味わうための鍵です。黄金竜説、マスタードラゴン説、女神像の転生体説――どの説も、ゲーム内の手がかりや関連作品の情報を基に構築されており、どれも魅力的です。彼女の正体を考える過程で、プレイヤーはDQ6の世界観や天空シリーズの繋がりに新たな発見を見つけ、物語への愛着を深めることができます。
さらに、バーバラの正体は単なる設定の謎解きを超え、プレイヤーの感情や価値観を反映します。「彼女を救いたい」「ハッピーエンドを望む」という思いは、DQ6が単なるゲームではなく、プレイヤーの心に残る物語であることを証明しています。漫画版のハッピーエンドやファンの二次創作は、そうした思いの結晶と言えるでしょう。

 

 

6. 結論

バーバラの正体は、大魔女バーバレラの血を引き、カルベローナの女神像から生まれた神聖な精神体であり、黄金竜やマスタードラゴンと深く関わる存在であると考察できます。しかし、彼女の真の魅力は、公式設定の曖昧さがもたらす「想像の余地」にあります。黄金竜として空を舞うバーバラ、マスタードラゴンの卵を見守るバーバラ、あるいは主人公と結ばれるバーバラ――どの姿も、プレイヤーの心の中で生き続けます。
あなたはバーバラの正体についてどのように考えますか? 黄金竜説を支持しますか? それとも別の解釈がありますか? ぜひコメントであなたの考察を教えてください! DQ6の奥深い世界を、一緒に紐解いていきましょう!

 

 

参考文献

 

     

  • 『ドラゴンクエストVI 幻の大地』公式ガイドブック
  •  

  • ドラゴンクエスト大辞典
  •  

  • 各種ブログ・考察記事
  •  

  • 堀井雄二インタビュー(Vジャンプ、ゲーム批評など)
  •  

この記事は、ゲーム内の情報と公開されている資料を基に構成されていますが、考察には筆者の主観も含まれます。