Steam Deckは本当に売れないのか?その真相を徹底解説

Steam Deckは本当に売れていないのか?その真相を徹底解説

Valveが2022年2月に発売したポータブルゲーミングPC「Steam Deck」は、PCゲームをどこでも楽しめるデバイスとして大きな注目を集めました。
しかし、一部では「Steam Deckは売れていない」という声も聞かれます。
本当にそうなのでしょうか?この記事では、Steam Deckの販売実績、市場での立ち位置、競合との比較、そして今後の展望について、データと分析をもとに徹底的に掘り下げます。

 

Steam Deckの販売実績:数字から見る真実

 

公式発表がない中での推定販売数

 

ValveはSteam Deckの公式な販売台数を公開していません。
このため、販売実績を評価するには、市場調査会社やコミュニティの推定データに頼る必要があります。
以下は、主要な推定データです:

     

  • 2022年10月時点で100万台以上:KDEのデビッド・エドムンドソン氏が、Akademy 2022カンファレンスでSteam Deckの出荷台数が100万台を超えたと発言しました。
    これは、発売からわずか8カ月での実績です。
  •  

  • 2023年末までに約347万台:市場調査会社Omdiaは、2022年に162万台、2023年に185万台が出荷され、累計で347万台に達すると予測しました。
    この数字は、14%の成長率を示しています。
  •  

  • 2025年2月時点で約400万~600万台:IDCの推定によると、Steam Deckを含むハンドヘルドPC市場全体で3年間で600万台が出荷され、Steam Deck単体では約400万台とされています。

 

これらの数字を見ると、Steam Deckは決して「売れていない」とは言えません。
特に、ニッチなデバイスであることを考慮すれば、400万~600万台という数字は立派な成果です。
しかし、Nintendo Switchの1億5000万台(2025年時点)やPlayStation 5の約6000万台と比べると、規模は小さいと言わざるを得ません。

 

売上ランキングでの強さ

 

Steam Deckは、Steamストアの売上ランキング(収益ベース)でしばしば上位にランクインしています。
たとえば、2022年4月には5週連続で2位を維持し、その後1位に浮上。
2024年まで、トップ10内に安定してランクインしていました。
このランキングは収益ベースであるため、1台400ドル以上のSteam Deckが、60ドル程度のゲームタイトルと競合している点を考慮する必要があります。
たとえば、Elden Ring(1200万本以上売れた大ヒット作)と同等の収益を上げるには、Steam Deckは約10分の1の台数で済む計算です。
この点からも、Steam Deckの販売は堅調と言えるでしょう。

 

なぜ「売れていない」と言われるのか?

 

期待値とのギャップ

 

Steam Deckの発売前、Valveのブランド力やPCゲーム市場の拡大から、爆発的なヒットが期待されました。
特に、Nintendo Switchの成功(2017年発売から2年で3000万台以上)を受け、Steam Deckも同様の軌跡をたどるのではないかとの声がありました。
しかし、実際の販売台数はSwitchの1%程度に留まり、このギャップが「売れていない」という印象を生んでいる可能性があります。

 

供給制約と地域限定販売

 

Steam Deckの販売初期は、供給不足が大きな問題でした。
2021年7月の予約開始時には、わずか90分で11万件以上の予約が入ったものの、生産が追いつかず、2022年10月まで予約制が続きました。
また、発売当初は北米とヨーロッパが中心で、アジア(2022年12月)やオーストラリア(2024年11月)への展開は遅れました。
この地域限定販売が、グローバルな市場での普及を制限した一因です。
中国のような巨大市場での公式販売が未だにないことも、販売台数を抑える要因となっています。

 

Nintendo Switch 2発表の影響

 

2025年1月16日のNintendo Switch 2発表後、Steam Deckの売上ランキングが急落(3位から47位へ)したことが話題になりました。
このタイミングは、消費者心理に影響を与えた可能性があります。
Switch 2の価格(推定400ドル)がSteam Deckと競合し、Nintendoのブランド力や独占タイトルへの期待が、購買意欲を一時的に奪ったと考えられます。
ただし、その後Steam Deckは4位に回復しており、長期的な影響は限定的かもしれません。

 

Steam Deckの市場での立ち位置

 

ニッチ市場での成功

 

Steam Deckは、Nintendo Switchのようなメインストリームのコンソールではなく、PCゲーマー向けのニッチなデバイスです。
Valve自身も、Steam Deckを「PCゲームをポータブルにするツール」と位置づけており、SwitchやPlayStationと直接競合する意図はありません。
以下の点が、Steam Deckのユニークな立ち位置を示しています:

     

  • SteamOSの革新:Steam DeckはLinuxベースのSteamOSを搭載し、Windowsゲームの互換性を高めるProton技術を採用。
    これにより、Steamライブラリのほとんどのゲームがプレイ可能で、PCゲームのポータビリティを実現しました。
  •  

  • コンソールライクなUX:Windowsを搭載する競合ハンドヘルドPC(ASUS ROG Allyなど)と異なり、Steam Deckは直感的なコンソール風のユーザー体験を提供。
    ゲームパッド操作に最適化され、PC初心者でも扱いやすい設計です。
  •  

  • 価格競争力:399ドル(64GBモデル)から649ドル(512GB OLEDモデル)という価格は、競合のハンドヘルドPC(700~1000ドル)に比べ手頃。
    Switch(299ドル)より高いものの、PCゲームの性能を考慮すればコストパフォーマンスは高いです。

 

競合との比較

 

Steam Deckの競合には、Nintendo Switch、ASUS ROG Ally、Lenovo Legion Goなどがあります。
それぞれの強みと弱みを比較してみましょう:

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デバイス 価格 性能 ゲームライブラリ ターゲット
Steam Deck 399~649ドル 中程度(AMD Zen 2, RDNA 2) Steam中心、幅広いPCゲーム PCゲーマー
Nintendo Switch 299~399ドル 低~中(NVIDIA Tegra) Nintendo独占タイトル カジュアルゲーマー、家族
ASUS ROG Ally 699ドル~ 高(AMD Ryzen Z1 Extreme) Windows対応、広範なPCゲーム ハイエンドPCゲーマー

 

Steam Deckは、性能ではROG Allyに劣るものの、価格とユーザー体験で優位性を持ちます。
一方、Switchは独占タイトル(ゼルダ、マリオなど)とブランド力で圧倒的な市場シェアを誇りますが、性能面ではSteam Deckに及ばないため、異なるニーズに応えています。

 

Steam Deckが直面する課題

 

限られたリテール展開

 

Steam Deckは主にオンライン(Steamストア)で販売されており、Best BuyやAmazonのような大手リテールでの展開が限定的です。
これに対し、Switchは世界中の小売店で購入可能で、アクセシビリティが圧倒的に高いです。
Valveがリテール展開を拡大できれば、販売台数は飛躍的に伸びる可能性があります。

 

ゲームの最適化と互換性

 

Steam Deckは多くのPCゲームをプレイ可能ですが、一部のタイトル(特にEAやUbisoftの独自ランチャーを使うゲーム)では互換性の問題が発生します。
ValveはProtonを改良し続けていますが、大手パブリッシャーの協力が不足している点は課題です。
また、開発者がSteam Deck向けに最適化を行うインセンティブは、販売台数がSwitchやPS5に比べて少ないため限定的です。

 

モバイルデバイスとの競争

 

スマートフォン(iOS、Android)は、無料ゲームやカジュアルゲームの巨大なライブラリを持ち、ポータブルゲーミングの市場を支配しています。
Steam DeckはAAAタイトルやインディーゲームに強みがありますが、スマートフォンの手軽さや価格(多くの場合無料)に対抗するのは難しい側面があります。

 

Steam Deckの成功要因と今後の可能性

 

ソフトウェアエコシステムの強化

 

Valveの戦略は、Steam Deckのハードウェア販売よりも、SteamOSの普及とSteamストアでのゲーム販売に重点を置いています。
Steam Deckのユーザーの42%が、ゲーム時間の大部分をこのデバイスで過ごしているというデータもあり、Steamエコシステムへのエンゲージメントは高いです。
ValveはSteamOSを他のハンドヘルドPC(ASUS ROG Allyなど)にライセンス供与する計画もあり、ソフトウェアプラットフォームとしての影響力を拡大しつつあります。

 

コミュニティとカスタマイズ性

 

Steam Deckは、PCとしてのオープンさが強みです。
ユーザーはエミュレータのインストール、SSDの換装、Linuxデスクトップモードでの利用など、自由度の高いカスタマイズが可能です。
この柔軟性が、テック愛好家やPCゲーマーの心をつかんでいます。
Redditのr/SteamDeckコミュニティでは、改造や最適化の情報が活発に交換されており、熱心なファンベースが形成されています。

 

Steam Deck 2への期待

 

ValveはSteam Deck 2の開発を進めており、次世代APU(AMD Zen 4やRDNA 3)を搭載したモデルが数年後に登場予定です。
現行モデルがすでに多くのゲームで30~60FPSを達成しているため、次世代モデルではより高い解像度や安定したパフォーマンスが期待されます。
また、OLEDモデルの成功(2023年11月発売)を受け、ディスプレイやバッテリーのさらなる改良も予想されます。

 

結論:Steam Deckは「売れていない」のか?

 

Steam Deckの販売台数は、Nintendo SwitchやPlayStation 5のようなメインストリームコンソールには及ばないものの、ニッチなハンドヘルドPC市場では圧倒的な成功を収めています。
約400万~600万台の出荷実績、Steam売上ランキングでの安定した上位ランク、そして熱心なコミュニティの支持は、Steam Deckが「売れていない」という見方を否定する証拠です。

 

課題として、供給制約、地域限定販売、ゲームの互換性、競合との競争が挙げられますが、Valveの戦略はハードウェア販売にとどまらず、SteamOSとSteamエコシステムの拡大に重点を置いています。
この長期的なビジョンが実現すれば、Steam Deckはゲーム業界に新たなパラダイムをもたらす可能性があります。

 

現時点で言えるのは、Steam DeckはPCゲーマーにとって革新的なデバイスであり、ニッチながらも確固たる地位を築いているということです。
「売れていない」という噂は、過剰な期待や競合との比較から生まれた誤解にすぎません。
今後、Steam Deck 2やSteamOSの普及により、さらなる飛躍が期待されます。
あなたはSteam Deckについてどう思いますか?