ドラクエ11のエンディング考察:時を巡る物語とロトシリーズとの繋がり

『ドラゴンクエスト11 過ぎ去りし時を求めて』(以下、ドラクエ11)は、壮大なストーリーと感動的なエンディングで多くのプレイヤーを魅了しました。
特にそのエンディングは、単なる物語の終幕に留まらず、シリーズ全体の歴史や時間軸、そしてロトシリーズとの深い繋がりを示唆する内容となっています。

 

この記事では、ドラクエ11の通常エンディングと真エンディングを中心に、ストーリーの核心、時間軸の謎、ロトシリーズとの関係、そしてファンによるさまざまな考察を詳細に掘り下げます。
ネタバレを多分に含むため、未プレイの方はご注意ください。

 

 

ドラクエ11のエンディング概要:通常エンドと真エンドの違い

 

ドラクエ11には、大きく分けて「通常エンディング」と「真エンディング」の二つのエンディングが存在します。
これらはゲームの進行状況やプレイヤーの選択によって変化し、それぞれ異なるテーマとメッセージを伝えています。

 

通常エンディング:魔王ウルノーガの打倒

 

通常エンディングは、魔王ウルノーガを倒し、命の大樹の魂を取り戻すことで世界に平和が戻るシーンで締めくくられます。
このエンディングでは、主人公と仲間たちのその後がスタッフロールと共に描かれ、プレイヤーに一つの達成感を与えます。
しかし、物語はここで終わりません。
ウルノーガを倒した後、セーブデータをロードすると、さらなる冒険が待っています。
この時点で、物語は「過ぎ去りし時を求めて」というサブタイトルの本当の意味を明らかにする準備段階に過ぎないのです。

 

真エンディング:邪神ニズゼルファとの最終決戦

 

真エンディングに進むには、通常エンディング後に「過去に戻る」選択をすることが必要です。
主人公は時のオーブを砕き、ベロニカの死や世界の崩壊を防ぐため、異変前の世界へと旅立ちます。
この選択により、物語は大きく展開し、真のラスボスである邪神ニズゼルファとの戦いへと進みます。
ニズゼルファを倒した後、主人公は聖竜から「ロトの勇者」の称号を授かり、物語はドラクエシリーズの原点である『ドラゴンクエスト3』へと繋がるシーンで締めくくられます。

 

この二つのエンディングは、ドラクエ11のテーマである「時間」と「運命」を象徴しており、プレイヤーに異なる視点から物語を捉える機会を提供します。

 

時間軸と世界線の考察:パラレルワールドは存在するのか?

 

ドラクエ11のエンディングで最も議論を呼ぶのは、時のオーブを使った「時渡り」が物語の時間軸に与える影響です。
主人公が過去に戻ることで、元の世界はどうなるのか? また、セニカがさらに過去のローシュの時代に戻ることで、どのような変化が生じるのか? ここでは、時間軸と世界線の観点から考察を進めます。

 

時渡りの仕組みと世界の分岐

 

ドラクエ11では、時のオーブを砕くことで過去に戻る「時渡り」が物語の鍵となります。
主人公がベロニカの死を防ぐために過去に戻ると、元の世界(ベロニカが死に、魔王ウルノーガが君臨する世界)は消滅するのか、それとも並行して存在し続けるのかという疑問が生じます。

 

一部の考察では、時渡りによって世界が分岐し、複数のパラレルワールドが生まれるという説が提唱されています。
例えば、以下の二つの世界線が考えられます:
主人公が時渡りした後の世界:ベロニカが生き、ニズゼルファを倒した世界。
この世界はドラクエ1へと繋がるとされる。

 

主人公が去った後の世界:主人公がいなくなり、ウルノーガがニズゼルファの力を抑えた世界。
この世界はドラクエ3や天空シリーズに繋がる可能性がある。

 

しかし、ドラクエの生みの親である堀井雄二氏は、2017年のネタバレイトショーにおいて「ドラクエ11の時渡りはパラレルワールドではなく、一つの歴史に収束する」と発言しています。
この発言に基づくと、時渡りによって生じた世界は最終的に一つに統合され、ドラクエシリーズ全体の歴史として繋がっていくと考えられます。

 

セニカの時渡りとローシュの影響

 

真エンディングの終盤、セニカは勇者の紋章を受け取り、ローシュの時代へと戻ります。
彼女の目的は、ローシュを救い、ニズゼルファを完全に倒すことです。
この行動は、主人公たちの存在そのものを消滅させる可能性を孕んでいます。
なぜなら、ローシュがニズゼルファを倒せば、主人公が生まれるきっかけとなる事件(ウルノーガの暗躍など)が発生しないためです。

 

この点について、考察の一つとして「セニカがローシュを救った世界は、ドラクエ3の上世界(アリアハンがある世界)に繋がる」という説があります。
セニカの行動により、ニズゼルファの脅威が早期に排除された世界では、主人公たちの冒険は不要となり、異なる歴史が紡がれるのです。
一方で、主人公がニズゼルファを倒した世界は、ドラクエ1のアレフガルドへと繋がると考えられます。

 

ロトシリーズとの繋がり:ドラクエ11は原初の物語か

 

ドラクエ11のエンディングは、ロトシリーズ(ドラクエ1、2、3)との明確な繋がりを示しています。
特に真エンディングのラストシーンでは、ドラクエ3のオープニングを彷彿とさせる描写が登場し、プレイヤーに衝撃を与えました。

 

ドラクエ3への直接的なリンク

 

真エンディングの最後、紫色の髪を持つ女性(ドラクエ3の主人公の母親とされる)が「ぼうや」と呼びかけ、赤い本を開くシーンは、ドラクエ3の冒険の始まりを象徴しています。
この女性の髪色がセニカと同じ紫色であることから、彼女がセニカの子孫である可能性が指摘されています。
さらに、ドラクエ11の世界地図(ロトゼタシア)とドラクエ3のアレフガルドの地形が類似している点も、両作品の時間的な連続性を示唆します。

 

また、聖竜が主人公に「ロトの勇者」の称号を授けるシーンは、ドラクエ1で語られる「ロトの伝説」の起源を思わせます。
ドラクエ1のラダトームでは、勇者ロトの物語が語り継がれており、これがドラクエ11の主人公の冒険譚であると考えられます。

 

ドラクエ1との関係:聖竜と竜王の謎

 

聖竜はドラクエ11の物語において、命の大樹の化身として世界を見守る存在です。
しかし、エンディングでの聖竜のセリフには、自身が闇に染まる可能性を示唆するものがあります。
この発言は、ドラクエ1のラスボスである竜王や、ドラクエ3の竜の女王との関連性を匂わせます。

 

一部の考察では、聖竜が闇に堕ちた姿が竜王であり、竜王の城にロトの剣が存在する理由も、聖竜がかつて主人公に剣を託したことと繋がるとされています。
この説は、ドラクエ11がロトシリーズの原初の物語であることを強化するものです。

 

二冊の本:赤と緑の象徴性

 

エンディングで登場する赤と緑の二冊の本は、ドラクエ11の物語を象徴する重要なアイテムです。
赤い本は主人公の冒険譚を、緑の本はセニカとローシュの物語を記録していると推測されます。
これらの本は、ドラクエ11が二つの異なる世界線(ドラクエ1とドラクエ3に繋がる世界)を内包していることを示唆します。

 

興味深いことに、ドラクエ11の公式攻略本もPS版が緑、3DS版が赤であったことから、ファンの間ではこの色の選択が意図的であるとの議論が交わされています。
赤い本がドラクエ3の母親によって開かれるシーンは、主人公の物語がアレフガルドに伝承として残ったことを示しているのかもしれません。

 

キャラクターとテーマの深堀り:ベロニカとセニカの役割

 

ドラクエ11のエンディングは、単なるストーリーの終結だけでなく、キャラクターたちの成長や犠牲を通じて深いテーマを描いています。
特に、ベロニカとセニカの存在は、物語の核心に迫る重要な役割を果たします。

 

ベロニカの犠牲と再生

 

ベロニカは、魔王ウルノーガとの戦いで命を落とすものの、時渡りによってその死が回避されます。
彼女の犠牲は、主人公が過去に戻る動機となり、物語の転換点となります。
ベロニカとセーニャの「双賢の姉妹」としての関係は、赤と緑の二冊の本のモチーフともリンクし、物語のテーマである「繋がり」と「再生」を象徴しています。

 

セニカの決意と愛の物語

 

セニカは、ローシュを救うために自ら時渡りを選択するキャラクターです。
彼女の行動は、愛と犠牲のテーマを強調し、ドラクエ11の物語にロマンティックな要素を加えています。
セニカがローシュと再会するシーンは、プレイヤーに感動を与えると同時に、ドラクエ3の歴史の始まりを示唆する重要な瞬間です。

 

ドラクエ11と天空シリーズの関係

 

ドラクエ11はロトシリーズとの繋がりが強調されますが、一部の考察では天空シリーズ(ドラクエ4、5、6)との関連性も指摘されています。
例えば、主人公がいなくなった世界が天空シリーズに繋がるという説があります。
この世界では、ベロニカが存在しないため、異なる歴史が展開し、天空の剣やルビスの物語が生まれる土壌が整うとされています。

 

プレイヤーの選択とエンディングの多様性

 

ドラクエ11では、プレイヤーの選択によってエンディングに微妙な変化が生じます。
例えば、結婚イベントではエマや仲間たちとの結末を選ぶことができ、これが物語の余韻に影響を与えます。
特に、エマと結婚した場合、主人公の子孫がドラクエ1の勇者となる可能性が示唆され、シリーズの連続性をさらに深めます。

 

考察の総括:ドラクエ11が描く「歴史の収束」

 

ドラクエ11のエンディングは、単なる物語の終わりではなく、ドラクエシリーズ全体の歴史を再定義する試みです。
堀井雄二氏の「一つの歴史に収束する」という言葉通り、ドラクエ11はロトシリーズの原初の物語として、ドラクエ1、3、そして天空シリーズへと繋がる壮大なサーガを提示しています。

 

時間軸の複雑さや世界線の分岐は、プレイヤーにさまざまな解釈の余地を与え、ファンの間で活発な議論を巻き起こしています。
赤と緑の二冊の本、聖竜の言葉、セニカの決意――これらの要素は、ドラクエ11が単なるRPGを超え、時間と運命について考える哲学的な作品であることを示しています。

 

結論:ドラクエ11はシリーズの集大成

 

ドラクエ11のエンディングは、シリーズのファンにとって感慨深い体験であり、新規プレイヤーにとっても魅力的な物語を提供します。
ロトシリーズとの繋がり、時間軸の謎、キャラクターの深いドラマは、プレイヤーに多くの考察と感動を与えるでしょう。
あなたはこのエンディングをどのように解釈しますか? ぜひ、自分の視点でドラクエ11の物語を紐解いてみてください。